2014-05-30 Fri
最近、日本ではSF、空想科学小説がちょっと下火になってるそうです。
SF学会でも会員の除名問題なんかでもやもやしてるようで。
残念なことですが、それでもわたしはSFが好きです。
もちろん私の世代は、ブラッドベリやF・ブラウンのような草創期の
作家から入りました。
当時の曖昧模糊とした純文学とは対照的な、エネルギッシュで
科学的な知性というあり方に魅力を感じました。
J・G・バラードもそうした巨匠のひとりです。
映画にもなった「太陽の帝国」は彼の自伝的な小説でした。
第二次大戦のとき、上海のイギリス居留民の子供として日本軍の
収容所に抑留された体験をもとにしたもの。
収容所生活を楽しみにさえしてしまう少年の世界が終戦とともに
消えてしまい、同時にかれの少年期も終わりを迎える。
その喪失感がいい味わいを出してました。
この自伝「人生の奇跡」を読んでようやくこの巨匠の頭の中の地図が
すこし見えてきたような気がしました。
上海生まれですので、イギリスにいくといわゆる帰国子女。
その帰国子女の眼から見た、終戦後に凋落していくイギリス社会の姿
はとても面白い分析になっています。
蛇足ですが、かれは一時期RAFに所属したことがあります。
飛行機が好きだったんですね。
ハーバードで飛行練習して、Vボマーの乗員養成コースに参加したそうです。
そのときカナダで雪に閉ざされた兵舎でたまたま手にしたSF本を読んで
作家を志したのだとか。
さて、日本の社会はこれからゆっくりとした崩壊の過程に入っていくと
私は見ています。そのときに、彼の小説のキーになっている崩壊の
イメージが見直され、また読まれていくんじゃないかなあと感じています。
2014-05-27 Tue
15年くらい前に、新宿のプラモ屋さんで買ったジャンクキットです。
箱も取説もデカルもなくて500円はどうよ、と思ったけれど
単発の飛行艇という形態のプラモは珍しいので購入しました。
どこかロシア東欧のメーカーだろうと思います。
一見していただいただけで、実機のシャープな姿の片鱗も
残っていない駄作キットであります。
ソリッドモデルっぽいですね。
なんでこんなん作っとるねんと突っ込まれれば、「ごもっともです」
というしかない代物であります。
多分、そんなに古くはない模型だと思います。
1990年代くらいでしょうか。
でも中身は1960年代プラモの味わいがたっぷりです。
モデルというよりトイというべき雰囲気がかわいいですが。
カタパルト発進のできる短距離観測機として1940年に
初飛行。
ところが、肝心のカタパルトの完成がもたもたして、大戦後期に
少数機がソビエト艦隊の巡洋艦や戦艦に配備されただけで
おわりました。
ソビエトの水上機・飛行艇といえばベリエフの設計チーム。
そのなかでも珍しい機体のキットというところだけが売り
ですかねー。
2014-05-20 Tue
昭和十年は日露戦争戦勝30周年の年でした。
そのため、この年には日露戦争の回顧録など、たくさんの
本が出版され、全国で講演会やら行事が行われました。
私も田舎の町村で開かれた戦勝記念運動会の写真を
見たことがあります。
写真は、学生のころ古本屋で漁った昭和10年発行の大衆本。
「日露大戦秘史」の海戦編と陸戦編は朝日新聞社、
「日露大戦を語る」は東京日日新聞社発行。
どれも20~30銭の廉価本です。
でもいろんなエピソードが語られていて面白いです。
下村海南の序に曰く。
「日露戦役の当時を知らざる者は、満州事変を語るに足りない、
現時の日本を論ずることが出来ぬ。」
そうですね。過去を知らなければ未来を失う。
問題は知り方ですね。
都合のいいところだけ切り貼りして、ああだこうだという論調が
多いので、ここは逆をいって生の資料を読むことじゃないでしょうか。
体験談とか当時の文献を見ていくと、本当に人それぞれ。
相互に矛盾することがらも多くて、多面的に物事を見ることが出来ます。
時間がかかっても、そのほうが具体的な歴史像をつかみやすいなーと
思います。
2014-05-18 Sun
半藤一利さんの「日露戦争史」 全三巻。
今年1月に最後の三巻目が出版されましたが、私はまだ読んでません。
図書館から借りてこなくては。
また夜更かしの日が続くことになりそう。
司馬遼太郎さんは明治の政治家・軍人はすばらしかった、それに
ひきかえ第二次大戦のときは......。という観点から「坂の上の雲」
を書きました。
それに対して、半藤さんは、明治と昭和のあいだに断絶があるの
ではなくて、昭和の政治家・軍人のふがいなさは明治・幕末から
その萌芽がありますよというのです。
半藤さんのこの本はその語り口の魅力とともに、最新の発見資料
を織り交ぜて日露戦争の全体像を描写しているところが、おすすめ
ポイントです。
なかでも、「極秘 明治三十七八年海戦史」の史料にはびっくりです。。
203高地の奪取→旅順港艦隊の全滅は作り話だったこと。
日本軍の陸上からの砲撃で艦隊に被害が出ていたため、ロシア側は
軍艦を沈められる前に、大砲を全部陸揚げして要塞の防御に使っていたのです。
旅順港艦隊はすでに解体されていた。
それなのに大本営の命令どおりたいへんな犠牲を出して、しゃにむに
203高地に突進していたのですね。
軍や政府にとっては不都合な真実ですから、それを極秘にして軍国神話に
してしまう。そして第二次大戦では203高地にならって突撃戦をいどむ。
その極秘が連綿と続いて、100年近く後のさだまさしが歌う映画「203高地」に
まで繋がってしまっています。
機密保護の罪深さですね。しかも不都合を隠すためだけの。
2014-05-16 Fri
もとは1970年ころ発売のフロッグのキットです。
まだアリソンエンジン搭載のP51ムスタングの初期型。
プロペラが3枚なので見分けやすいですね。
この後エンジンをロールスロイス マーリンにかえて
最優秀戦闘機に変貌していきます。
数あるムスタングのキットのなかでも、このアリソン
タイプは長くこのキットだけでした。
キットの古さとともに、なかなかよい姿が魅力。
A36攻撃機への改造も簡単です。
この塗装はカムフラージュの検討用サンプルにされたもの。
こんな手のかかる塗装が正式採用されるわけがないのですが、
そういえばバッファローなんかにも手の込んだサンプル塗装が
ありました。
この白黒迷彩のムスタングは子供のころの少年漫画にも
出てきていたように記憶しています。
「ゼロ戦レッド」だったかなあ。タイトルはもう覚えてないですが。
2014-05-13 Tue
逢坂みえこ著「育児なし日記2」 ベネッセ刊
第二弾発売と聞いて、買っちゃいました。
育児雑誌「ひよこクラブ」に連載された漫画の単行本です。
去年、娘が出産のときにこれの第一弾を読んでいたので、
私も手にとってみたら最後のページまで、ずーっと笑い転げて
しまいました。
そんなことでもなければ、おじさんはまず絶対に縁のない漫画です。
でも私の子育て時代にこんな本があればよかったと思うところが
いろいろあります。
あかちゃんができるとどんなに生活が変わるか、旦那のほうにも
ちゃんと覚悟を持つ機会があったほうがいいに決まっています。
読めば旦那も役に立つ。
1巻と2巻。
抱腹絶倒のお勧め本であります。
2014-05-10 Sat
おもいっきりマイナーな機体ですみません。
でも、それなりの物語がありまして。
チェコスロバキアのKP社のシュコダD1戦闘機のキット。
いつごろ発売のものか正確には分かりませんが、
70年代末か80年代前半くらいでしょうか。
比較的あたらしいもののようです。
作例はチェコの内務省の航空隊でつかわれたもの。
民間機のレジスターがついています。
シュコダD1はチェコスロバキア最初の全金属製の機体です。
1920年代の後半のこと。
もとはフランスのデボアチンD21のライセンス生産品です。
このシリーズの元になったデボアチンD1は日本でも輸入して
やはり全金属製機生産の参考にしています。
デボアチンの高翼戦闘機のシリーズは、低翼のD500にたどり
着くまで長い歴史があって、チェコだけでなくヨーロッパ中の航空に
大きな影響を与えています。
外観を見る限り、このキットをもとにデボアチンD1への改造
は簡単そうです。
フランスでは海軍機用に30機ほど生産されただけで、あまり
いい塗装例がないのですが、イタリアでアンサルドAC2として
ライセンス生産されたものに面白い塗装があります。
いつか、やってみようかなと思ってます。