2017-03-13 Mon

19世紀末から戦前までの間、欧米で何回かのジャポニズムの
ブームがあって、内村鑑三や新渡戸稲造、岡倉天心などの著作が
もてはやされました。
その流れの中でベストセラーになったのが杉本鉞子の「武士の娘」でした。
「武士の娘」は明治維新で朝敵となった長岡藩の没落した士族の娘が
辛苦の末にアメリカに移住した半生を描いたものです。
内田義雄のこの本は、「武士の娘」が書かれた背景を調べてまとめた
本です。
四書五経を学ぶところから始まる封建社会の中から生まれ育った鉞子が
なぜ近代民主国家の人々を瞠目させるような不屈の精神と気品ある人格
を持つにいたるのか。
これが内田さんの書きたかったことでしょう。
鉞子自身も執筆の動機を、こう述べています。
「米国人は心を開いて日本を知ろうと努力するけれども、とにかく思い違いが
多い。」
「自分の生い立った貧乏武士の家庭生活、むしろ西洋文化の影響を受けること
の少なかった時代の純日本夫人の教養というような方面を語ってみた。」
近代民主社会の理想は、封建社会から搾りだされた要素を土台に成立してます。
民主社会が拝金主義に変質した時代に、鉞子が提示した封建社会の良質な要素
が新鮮に映るのはむしろ当然だったのかもしれません。
もちろん、これは現代にも通用するテーマだと思います。
NHKの朝の連続テレビ小説や大河ドラマのテーマにもなりそうなくらいの内容ですが
アメリカ生活が長くて日本では無名なので、テレビ化は難しいのかと思います。
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